御崎市は、市の中央を走って南北に走る真南河を挟み、東側が都市機能を集中させた市街地、西側がそのベッドタウンである住宅地という、かなり露骨な作りをしている。街の西と東を結ぶのは、「御崎大橋」という大鉄橋だ。
 その橋の袂に、周囲から頭一つ抜けて高くそびえるデパートがあった。正確にいうなら、元デパートだ。
 現在営業しているのは、地下の食品売り場だけ。親会社の事業撤退で、地上部分は放棄されたのである。
長引く不況のせいで新しいテナントも入らないまま現在に至り、市街で一番高いこのビルは完全な空き家と化していた。
 誰も見向きもしない。興味も持たない。そんな廃ビルに住まう者がいるなど誰が想像するだろうか。
 ビルの屋上で、一人の男が風を受けて佇んでいた。上から下まで真っ白なスーツに身を包み、長衣を風にはためかせて。
それだけでも十分異様な光景だったが、それに拍車を掛けているのが男の腕の中にある人形だった。
特に作りに手が込んでいるというわけでもなく、どちらかといえば粗末とさえ言えるような、少女の姿を模したその人形を、男はほっそりとした指先で愛おしそうに撫でているのである。まるで、恋人にするように。
 愛撫を受ける人形の方は、当然の如く表情を変えない。
 ボタンを埋め込んだ目。赤い糸で縫われた口の線。表情の変化など起こり得る訳がない。
だが、そこには紛れも無い幸福の色があった。共にあることを至上の喜びとする「彼女」の想いは、確かに男に届いていた。
 男――フリアグネは、自分と彼女の間柄を表現する言葉を、いまだに持ち合わせていない。
 この国に来て、この国特有の独特な言い回しを知った。比翼の鳥。連理の枝。成る程、美しい言葉だと思う。
 実際に口にしてみた感触も悪くはない。だが、足りないのだ。自分と彼女の間で交わされる愛を表すには全く足りない。
自分達の計画が成就するその時に、彼女に捧げる言葉としてそれを探してきたのだが、言葉を尽くしたところで表せるものではないのかもしれない、とフリアグネは時折思うことがある。
彼女との出会いは、自分にとっての必然であり、運命であり、自身がこの世にあることのたった一つの理由。
その事実と、これからどこまでも広がっていく彼女との未来。それだけで十分なのかもしれないと、最近では思い始めていた。

 人形――マリアンヌは、共にある幸福を噛み締めながら、己の過去を振り返る。
 新たな生を受けた瞬間に見た、主の笑顔。そこから始まった、何よりも満ち足りた百数十年間。
交わした言葉の一つ一つ、捧げ、向けられた想いの一つ一つ。その全てがマリアンヌの宝だった。
 だからこそ、喪失の恐怖は大きくなる。マリアンヌは、主の計画の困難さ、実行に伴う危険性を理解していた。
 主の実力を疑っている訳ではない。主の前に立ちはだかった討滅の道具どもが返り討ちにされていくのを、マリアンヌは幾度も見ているのだから。
 主の計画は、討滅の道具どもに知られれば全力で阻止に掛かられることが間違いない代物。
 過去、この計画の要となる秘法を編み出した者とて、最後には奴等に討滅されてしまった。
もし、万が一。そんなことを考える度に、マリアンヌの小さな胸は不安で張り裂けそうになる。
自分のために、主にそこまでの危険を犯させてしまってもいいのだろうか。
 主からの力の供給が無ければ生きられない我が身の儚さは、愛しい主との断ち難い絆。
 我が身が作られたのは、ただ愛しい主に出会うがため。
そう訴えて彼を引き止め、永遠に二人で静かに過ごせたら――。主人に仕える者としてあるまじき望みを抱いた日が、何度あっただろう。
 さしでがましいこととは知りつつも、実際に言ってみたこともある。だが、マリアンヌが望むことであれば何でも叶えてみせるフリアグネは、その件に限り、頑として首を縦に振らなかった。柔らかに微笑みながらも、真剣な眼差しで彼女を見据えてこう言った。

『君と出会った日に、私はこの世に渡り来た本当の意味を悟ったんだ。私は君のために出来ること、その全てを行う。それこそが、今、私がこの世に存在している、全ての理由なんだ』

 なんという、身に余る幸福。なんという、主の愛の深さ。
 それを感じ、マリアンヌは身体の奥底から震えが湧き上がるのを止められなかった。
 マリアンヌは主に従う。主が自分のために出来ること、その全てを為してくれるというのなら、自分は彼のために出来ること、その全てを行おう。その邪魔をする者がいれば、誰であろうと討ち滅ぼすのみだ。例え、この身が砕け散ることになったとしても。

「何を考えているんだい? マリアンヌ」

 彼女の思い詰めた気持ちを敏感に察し、フリアグネが声を投げ掛けた。
 その優しい響き。マリアンヌにとって、彼を欺くということは万死に値する重罪だった。

「ご主人様のことを」

 端的に答えた。

「……私の身を案じてくれているんだね。優しいマリアンヌ」

 フリアグネは、そんな彼女のいじましさを見通して優しく言った。
 マリアンヌは、主人の力を信用していないと捉えられても仕方の無い不安を自分が抱いたこと、それを誤魔化そうとしたことを恥じた。
彼はそんな彼女の不安を丸ごと包み込むような慈愛を持って、彼女に語り掛ける。

「心配を掛けてごめんよ。でも、それももう終わりだ。君のために必要なだけの力を得る目途はついた」
「はい」
「例えフレイムヘイズが嗅ぎ付けてきたとしても、私には敵わない。フレイムヘイズ相手なら、私は絶対に負けない……そうだろう?」
「もちろんです、ご主人様」
「なら、この夜は楽しいことを考えていた方がずっといい」

 その微笑み。マリアンヌは、それだけで百年分の力を貰ったような気がした。
 フリアグネの足が、地面から離れた。音も無く空中に舞い上がり、身体の周りに白い火花を散らしながら、戯れるように飛ぶ。
その様は光の蝶が舞っているようにも見えた。

「誉れに思え!」

 眼下に広がる見事な夜景。人間の街に向かって、フリアグネは謳うように言った。

「お前達の"存在の力"で、マリアンヌはこの世で一個の存在となる!」

 調子っ外れに、フリアグネは歓喜の歌を謳う。
 白炎が夜空に白い奇跡を残した。
 月光の下、恋人達は踊り続けた。
 いつまでも。いつまでも。

 ――星が一つ流れた。

 

 

 

 

 

 

 切れ切れの眠りをどうにか振り切って、湊は朝を迎えた。
 見慣れない部屋だ。何でこんな所で寝てるんだろう、と考えて、今の自分の不可思議な状況を思い出した。
 布団を除けてベッドから下りた。部屋を出ると、階下からいい匂いが漂ってきた。
階段を下りると、湊は洗面所に向かった。洗面所に入ると、まず目に付いたのは鏡だった。
やはり、そこに映る姿に違和感を感じられずにはいられなかった。
完成されたジグソーパズルの中にはめ込まれた、違う絵柄のピースになったような気分だった。
 洗顔と歯磨きを済ませ、寝癖を櫛で整えると、湊は居間に向かった。
 居間に入ると、千草が食卓の上に二人分の朝食を並べているところだった。
ご飯と味噌汁、海苔と玉子焼きというシンプルでオーソドックスなメニューだった。

「おはよう、悠ちゃん」

 千草が、人のよさそうなおっとりとした笑顔で湊に声を掛けた。
 
「おはようございます」

 湊が「親子」にしては些か他人行儀な返事をした。千草は病院の時のように(少なくとも見た目には)気にした様子を見せなかった。
 砕けた話し方をするのに抵抗感を示した湊に、彼女は「慣れるまでは好きなように話してくれていい」と言ってくれたのだった。
挨拶を交わした二人は、揃って席に着く。

「今日から学校だけど、身体の調子はどう?」
「大丈夫です。おかげさまで、もう、すっかり」
「そう。よかった。でも、病み上がりなんだから無理しちゃ駄目よ」
「はい」

 病院で目を覚ましてから三日後、湊は退院した。今日は赤の他人に成り変わってから四日目の朝である。
 医師の話によれば、患者の健康状態は良好。社会的能力の欠損も認められない。
 記憶が無いことを除けば、日常生活を送る分には問題無いだろう、ということだった。
 退院後の生活のことは、医師や千草と話し合った。休学してしばらく自宅療養するか、それとも普段通り学校に通うか。
 湊が選択したのは後者だった。何故自分が今のような状況に陥ったのかは相変わらず全く理解出来ていなかったが、療養していたからといって治るようなものではない。呑気に学校なんか通っていていいものだろうか、という気持ちはあった。
だが、いつまでも家の中に閉じ篭っていたら吉田や千草に余計な心配を掛けるだけだ。
そういう訳で、有里湊=坂井悠二は本日から市立御崎高校に登校することになったのだった。
 二人揃って手を合わせて「いただきます」をした後、湊は箸を取った。
 最初に箸をつけた玉子焼きは、食べると口の中にたっぷりと出汁が滲み出て、驚くほどふっくらとしてジューシーな味わいだった。
ご飯のおかずにぴったりな味だ、と湊はつやつやと光沢のあるご飯を口に運んで実感した。
続けて飲んだ味噌汁の味も素晴らしいものだった。具はわかめと豆腐というシンプルなものだったが、鰹と昆布の出汁がよく効いていて、香りまで美味しい。飲むとほっとする味だった。
 ふと、千草が笑みを強くしてこちらを見ていることに気付いて、湊は顔を上げた。

「そんなに美味しい?」
「え?」
「だって、凄く美味しそうに食べてくれるんですもの」

 そんなにわかりやすく顔に出ていただろうか、と湊は思わず自分の顔に触れて確認したくなった。
 千草は変わらずにこにことした顔で、こちらの返答を待っている様子だった。

「はい、とても美味しいです。温かい味というか、食べると元気が出る味というか」
「ありがとう。ふふ、悠ちゃんから『美味しい』って言ってもらうなんて久し振りね。何だか新鮮な感じ」

 そう言って、千草も朝食を食べ始めた。
 湊は、ふと彼女の本当の息子、坂井悠二とはどんな人物だったのだろう、と考えた。千草と吉田はとても親切で、心優しい。
彼女達がどれだけ彼を大切に思っているかは、出会って数日間しか経っていない自分とて理解できる。
もし自分、いや、彼が突然いなくなったりしたら、彼女達はどう思うだろうか。
 ……想像すると、急に腹の底が冷え冷えとしてきた。湊はお椀を傾けてまた味噌汁を一口すすった。
 朝食を食べ終わった後で、湊は「自室」に戻った。ハンガーに掛けてあった制服に着替え、机の上にある鞄を手に取った。
 教科書やノートの準備は昨日の内に済ませてあった。最後に腕時計をはめて、一応部屋の時計と時間のずれがないことをチェックすると、湊は部屋を出た。階段を下りた先では千草が待っていた。

「悠ちゃん、忘れ物はない?」
「はい。では、いってきます」
「いってらっしゃい。気を付けてね」

 千草に見送られて、湊は家を出た。



 事前に地図で通学路を確認していたので、道がわからないということはなかった。坂井家からの距離は、徒歩で約二十分程度。
 始業時間まではまだ余裕がある。自転車通学が禁じられている所以である、幅の狭い住宅街の道を湊は歩いた。
風に乗って来た桜の花弁が袖口にはらりと落ちた。

「吉田さん?」

 道の端でじっと佇んでいる吉田一美の姿が目に入り、湊は声を掛けた。

「あ……」

 声を掛けられた吉田は、ぴくっと肩を震わせた。瞳が落ち着きなく揺れ動いている。鞄の取っ手をぎゅっと握り締めた。
 それが意を決する合図だったかのように、吉田は湊に向き直った。ぺこり、と頭を下げて言う。

「お、おはようございます。坂井君」
「おはよう、吉田さん。この前はありがとう」

 いえそんな、と謙遜する吉田。

「どうしたんだ、こんな所で?」
「さ、坂井君を待っていたんです。一緒に学校に行こうって思って……」
「僕を?」
「はい。坂井君のお母さんから、今日から坂井君が学校に来るって聞いて……ご迷惑でしたか?」

 湊は、昨日千草が学校に電話で連絡を入れていたのを思い出した。彼女はあの後で吉田の家にも電話したのだろう。
 坂井悠二は吉田の友人だ。その友人が突然倒れて一週間も意識不明状態が続き、ようやく目覚めたと思ったら記憶喪失になっていたという、そんな状況に陥ったとすれば、彼女が友人の心配をするのは当然のことだった。
 吉田の表情には緊張の色が濃い。彼女にしてみれば、今の坂井悠二と話をするのは気後れすることだろう。
 何かの拍子に相手を傷付けるようなことを口にしてしまわないか、怖がっているような感じだった。
事実、彼女は先日のことで相当な衝撃を受けていた。それでも彼女がここにいるのは、友人を気遣う気持ちがそれに勝ったからだろう。

「いや、そんなことはない。それと、一つお願いしたいんだが、学校に着くまで話を聞かせてくれないか?」
「え?」
「学校のこと、お互いの友人のこと。それから、君のことを教えてほしい。この前はあまり話せなかったからな」

 幾許かの打算はあったものの、吉田が話しやすいようにしようと思ったのも本当だった。
 自分の顔を見る度気まずい想いをするのでは、彼女が気の毒だ。
こういう場合は自分の方から話題を提供する方がいいのだろうが、生憎と自分は話術に長けていない。
出会って間もない女の子と、軽妙な会話を交わして盛り上がれる程器用ではないのだ。
湊は、以前順平に「自分からアグレッシブに話していかないと女の子に飽きられちゃうぜ?」と言われたことを思い出した。
普段の順平が女性陣にどう扱われているかを見ると、それも良し悪しだなと思っていたが。

「私のことも、ですか?」
「ああ。君が親切な人だということ以外には、僕は君のことをよく知らない」
「いえ、そんな」
「君の家はこっちとは違う方角にあるんだろう。わざわざ遠回りして迎えに来てくれた。僕が寝ている間何回も見舞いに来てくれていたそうだし、休んでる間に学校で配布されたプリントを届けてくれたのも君だ。十分に親切だと思う。助かったよ、本当にありがとう」

 見舞いとプリントの件は千草から話を聞いていた。
 吉田は顔を赤くした。照れて言葉が出ないのだった。

「そこまで良くして貰ったのに、それ以外君のことを何も知らないというのもおかしな話だ。それに、今の僕はこういうことになっている。主だった自分の友人の顔と名前ぐらいは一致するようになっておきたい」

 その言葉に、吉田ははっとした。坂井悠二はこれから「見知らぬ知人や友人」の中で生活をしなければならないのだ。
 自分の母親の顔さえわからない。自分の立ち位置に全く見当が付かない。頼りになるのは伝聞情報だけ。不安にならない筈が無い。
彼女はそのことに気付き、それまで浮かれ気味だった自分を恥じたのだった。
実際のところ、湊のいう「こういうこと」と彼女の認識にはずれがあったのだが、話は通じていたのでそれはこの際問題では無い。

「わかりました。そういうことでしたら、喜んで。ええっと、何からお話ししたらいいでしょうか……」

 気を取り直して、吉田は話を始めた。浮かべた笑顔には少し無理をしている感じが見受けられたが、それでも最初よりは固さのとれた態度だった。



「……クラスメイトの人達は、皆いい人ばかりですよ。池君はクラスの揉め事なんかをいつも解決しちゃう凄い人だし、緒方さんは明るくて運動神経抜群。最近バレー部でレギュラーに抜擢されました。一年生でレギュラーになったのは緒方さんだけなんですから、凄いですよね。それから、平井ゆかりちゃんっていう娘は……」

 桜の花弁が舞う通学路を、二人並んで歩く。二人の前方には御崎高校が見えてきていた。
 その間、湊は吉田から互いの友人のこと、学校の雰囲気、教師陣のこと、その他色々な話を聞いた。
そうしている内に吉田は少しずつ自然な感じで湊と話が出来るようになり、湊はここに来るまでに何度か彼女の笑顔を見ることが出来た。
彼女がある程度気持ちの整理をすることが出来た、という点ではよかったといえるだろう。
 二人は校門のすぐ近くまで来た。その前の生徒の姿はまばらだ。その中の一人が、小走りで二人の下へとやって来た。

「坂井君、久し振り! もう大丈夫なの? ずっと学校来ないから心配してたよ!」

 元気よく湊に呼び掛ける。その声の主は、ネコのワンポイントが入ったヘアゴムで髪を束ねた少女だった。
 少女が走ると、束ねた髪の両端が尻尾のようにぴょこんと跳ねた。
未だに慣れない呼ばれ方。彼女も坂井悠二の友人なのだろうか、と湊が思った時、吉田が少女に挨拶を返した。

「ゆかりちゃん、おはよう。今日は早いんだね」

 お互い気心の知れた相手だと感じられる、親しみの込もった挨拶だった。彼女が言いかけていた平井ゆかりだ、と湊は理解した。
 吉田は基本的に苗字に「さん」付けで呼び、同級生相手にも敬語で話す。
そんな彼女が「ちゃん」付けで呼び、普通に話している。きっと特別に仲の良い友人なのだろう、と湊は思った。

「おはよっ、一美! 何か今日は早く目が覚めちゃってさ。ま、おかげで『今日のわんわん』見られたし、朝一で坂井君の元気そうな顔見られたけどね。早起きは三文の徳ってやつ? そーいう一美は今日は坂井君と一緒に来たの?」
「え、えっと……うん」
「うんうん、良い事だ。甲斐甲斐しくて実に良いねぇ。一美にはこーいう押しが足んないと常々思ってたんだけど、やれば出来る子だったんだね。ちょっと見直したかも」

 吉田の顔がぱっと赤くなった。ちらりと湊の方を見て言う。

「ゆ、ゆかりちゃんっ! 何言ってるの、もうっ」
「あはは。ごめんごめん。一美があんまり可愛いもんだからさ、つい。……でもよかった。坂井君が元気そうで」

 咎めるような視線を向ける吉田に軽く笑ってみせた平井は、不意に真面目な声で言った。

「けど、あまり無理しちゃ駄目だよ。病み上がりが一番危ないんだから。調子が悪くなったらちゃんと言ってね」

 彼女の言葉には労わりが込もっていた。その心遣いを感じ、湊はじんわりと胸が温かくなるのを感じた。
 吉田もそうだが、坂井悠二は友人に恵まれていると思った。

「わかった。ありがとう」
「うん。素直でよろしい」

 平井が大袈裟に頷いた。
 三人は連れ立って昇降口へと向かった。三人の教室は一年A組だ。一年、と聞くと湊としては何だか妙な感じがした。
本来なら今年で三年生になる筈だからだ。今更といえば今更な話ではあったが。

「ねえ、一美。『今日のわんわん』に投稿してみる気はない? エカテリーナって相当賢いじゃない」
「でも、あれって飼い主の方もボートに乗ったり橋を渡したりしなきゃいけないんでしょう? 私にはちょっと……。それに、まず抽選で当たることが難しいと思うし」
「あー、そうか。それじゃちょっと無理っぽいかもね。特に前の方が」
「わざわざ前の方がって言わなくたって……」

 三人の傍を、次々と生徒達が通り過ぎていく。校門付近にはいつの間にか生徒の姿が増えていた。
 生徒達の流れに従い、三人は昇降口へと歩いていく。


 ごく近い未来、この三人の中の一人が永久に姿を消すことになるとは、この時誰も想像すらしていなかった。



 あとがき

  あれもこれもと直していたら、意外に書くのに時間が掛かってしまいました。シャナが出るのは次々回あたり?



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